磯で、保護者の見えない場所にいた女の子が声を出せず沈み始めました。

その約30分後には、同じグループの少年が岩に引っ掛かり動けない状態に。

二件の救助から感じた「見ていない時間」の怖さを父親目線で振り返ります。

はじめに

妻の背後で、小学校中学年くらいの女の子が静かに沈み始めていました。

助けを呼ぶ声はありません。パニックで声を出せないまま、顔の位置が少しずつ下がっていました。

私は、約2メートル離れた妻に声をかけました。

「後ろの子、助けてあげて」パニックになって沈んでいく女の子はこちらに目線を送り、助けてと言わんばかりの表情で水中へ沈んでいきました。私が動き出すよりも、同性への安心感、妻の方が近くにいたこと、当時風が吹いており、風上側にいるであろう保護者へ声の大きい私が叫んだほうがいいと判断した結果です。

妻がすぐに泳いで救助しました。その間、私は女の子の保護者を探しましたが、近くに姿はなく、呼びかけへの返事もありませんでした。

水辺では、子どもから一瞬も目を離してはいけない。二件の救助を目の前で経験し、その重さを改めて感じました。

結論

泳げる子でも、ライフジャケットを着けた子でも、見守る大人がいなければ危険をすぐに発見できません。

道具や水泳経験は、安全を支える要素です。しかし、子どもを見続ける大人の代わりにはなりません。

消費者庁は、子どもが声や音を出さず静かに溺れる場合があると注意喚起しています。水に入る場面では、目を離さず、手の届く範囲で見守ることを求めています。消費者庁「子どもの水の事故を防ごう!」

女の子の異変に気づけたのは、偶然近くにいた私たちが水面を見ていたからです。もし周囲に誰もいなければ、その先に何が起きていたか分かりません。

わが家の状況

その日は、家族で私の地元である磯に訪れていました。詳しい場所は、子どもの安全と地域の特定を避けるため掲載しません。

私たち夫婦には海に関わる仕事の経験があり、海の危険や救助方法を学んでいます。同行した私の父も海に慣れています。

三兄弟には、大人が一人ずつつく体制を取っていました。大人の人数をそろえるだけでなく、それぞれが担当する子どもの位置を確認します。

今回救助した二人は、わが家とは別のグループの子どもです。同じグループ内の異なる二家族で、約30分の間に危険が続きました。

実際にやってみたこと

声を出せず沈んでいた女の子

私は妻と会話しながら、周囲の水面も見ていました。そのとき、妻の背後にいた女の子の動きがおかしいことに気づきました。

女の子はパニックになり、声を出せないまま少しずつ沈んでいました。私は妻へ知らせ、妻が泳いで救助しました。

発見が早かったため、女の子には意識がありました。海水を多少飲んだようで、救助後は咳き込み、しばらく泣いていました。

女の子の保護者は、子どもから見えない岩の向こうにいました。こちらの呼びかけにも気づかず、同じグループの別の保護者が気付き、呼びに行くまで現れませんでした。

迎えに来た大人からは、「プールを習っているのに溺れたの?」という言葉がありました。

私は、「溺れていたので、きちんと見ておかないと死にますよ。」と伝えました。あまりの危機感の無さとプールと海の違いを全く認識しておらず呆れます。

この女の子が溺れた原因は首からぶら下げ、水中を覗くたこメガネと呼ばれているものであると考えます。首からぶら下げたまま水中に入ってしまい、中に水が入って重くなりだんだん首が引っ張られるように海底へ沈んでいく。まさに見たままの出来事です。

女の子は落ち着いたあと、深い場所には近づかなくなりました。救急要請や医療機関の受診があったかまでは確認していません。

30分後、別の子どもにも危険が起きた

一件目から約30分後、同じグループにいた別の家族の少年が動けなくなっていました。

ライフジャケットの横にある長さ調整用のひもが、岩の突起へ引っ掛かっていたのです。

当時は潮が満ち始め、徐々に水位が上がっていました。水面は少年の口元付近にあり、少し大きなうねりが来ると顔へ水がかかる状態でした。

母親は異変に気づいていました。しかし、足の届かない場所から先へ進めず、少年は次第にパニックになっていました。

帰る準備をしていた私たちも状況に気づき、妻が泳いで救助しました。

この出来事は、「ライフジャケットが危険」という話ではありません。体格に合う装備を正しく使うことと、着用後も大人が見守り続けることの両方が必要だと感じた出来事です。

良かったこと

二人とも、深刻な状態になる前に異変へ気づけました。

女の子は意識があり、自分で咳をすることができました。少年も、パニックが強くなる途中で救助できました。

海や救助の知識があったことも、判断と行動につながりました。これは経験を誇る話ではありません。

本来は、別の家族が救助に入る前に、同行する大人が子どもの異変へ気づける距離にいる必要があります。

また、泳ぎに慣れていない人が慌てて水へ入ると、救助する側も危険になります。日本赤十字社は、まず周囲へ協力を求め、可能であれば陸上から浮く物や棒などを使う方法を案内しています。日本赤十字社「溺れた人の救助」

うまくいかなかったこと

一件目で最も怖かったのは、保護者と子どもの間に完全な「見守りの空白」があったことです。

保護者は岩の向こうにいて、女の子を見ることも、声を聞くこともできない位置でした。実際、女の子は声を出せませんでした。

迎えに来た別の保護者は、笑っているように見えました。その表情の理由や内心は分かりません。

ただ、私には危険の大きさが共有されていないように映り、正直、強い怒りが残りました。あと少し発見が遅れていたらと考えると、軽く受け止められる出来事ではありません。

二件目では、母親は子どもの異変を見ていました。それでも、自分が進めない水深で事故が起きたとき、すぐ助けられる体制がありませんでした。

「見えている」だけでも足りません。異変へ気づき、手を伸ばせる距離と、救助を求められる準備まで必要です。

改善したこと

今回の経験から、わが家でも「見ているつもり」を作らないことを再確認しました。

子ども一人につき大人一人を決めても、その大人が会話や片付けへ意識を向ければ、監視の空白は生まれます。

担当を離れるときは、別の大人へ声に出して引き継ぐ。水にいる子どもを見る人は、ほかの作業を同時にしない。すぐに手を伸ばせる位置を保つ。

消費者庁が水遊びの事故防止で示しているキーワードも「監視に専念」です。消費者庁「幼稚園等のプール活動・水遊びでの溺れ事故を防ぐために」

また、海上保安庁は、保護者が常に子どもから離れず、大人が海側に立つよう案内しています。海上保安庁「海で遊ぶ時の注意」

今日からできること

水辺へ行く前に、わが家も次の項目を確認します。

見守りの空白を作らない6つの確認

  1. 見守る大人を名前で決める
    「誰かが見ている」ではなく、担当を明確にします。
  2. 岩や人混みで視界が切れない場所を選ぶ
    子どもの全身と水面が見える位置を保ちます。
  3. 離れるときは声に出して交代する
    片付けやトイレの前に、別の大人へ引き継ぎます。
  4. 手を伸ばせる距離から見守る
    泳げる子や浮力のある装備を着けた子も同じです。
  5. 装備のサイズとひもを確認する
    着用後も、岩への引っ掛かりやずれを見続けます。
  6. 救助方法と連絡手段を先に決める
    泳力のない人が無理に入らず、周囲へ助けを求め、118番や119番へ連絡できるようにします。

管理された海水浴場を選ぶことも重要です。海上保安庁は、ライフセーバーや監視員がいる場所で泳ぐよう勧めています。

こんな家庭におすすめ

今回の内容は、次のようなご家庭と共有したいと思っています。

  • 子どもが泳げるため、少し離れても大丈夫だと感じる
  • ライフジャケットを着ければ安心だと考えている
  • 大人数で行けば誰かが見ていると思ってしまう
  • 岩場や磯で子どもと遊ぶ予定がある
  • 水辺で誰が見守るかを決めていない

家族全員で無事に帰るために、実際に起きたことを共有したいと思いました。

今後の目標

わが家でも、海に慣れているという自信が油断に変わらないようにします。

三人の大人が同行していても、役割が曖昧になれば見守りの空白はできます。水に入っている間は、監視する大人を必ず一人以上置きます。

子ども自身に危険を教えることも続けます。ただし、危険を判断しきれない子どもへ安全の責任を渡すことはしません。

まとめ

磯で、小学生くらいの女の子が声を出せずに沈み始めました。保護者は岩の向こうにいて、女の子を見ることも、こちらの呼びかけを聞くこともできませんでした。

妻が救助し、女の子は意識を保っていました。その約30分後には、同じグループの別の少年が、ライフジャケットのひもを岩へ引っ掛けて動けなくなりました。

二件とも大事に至る前に救助できました。しかし、近くに私たちがいなければどうなっていたかは分かりません。

プールへ通っていることも、ライフジャケットを着けていることも、安全を支える大切な要素です。それでも、見守る大人の代わりにはなりません。

水辺では、子どもから一瞬も目を離さない。

この日、私が最も強く感じたことです。

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参考・出典